この1年ほど、採用の仕事に携わらせてもらっています。

先日面接したA君19歳について書きたくなったので書きます。

A君は、都内有名私立(理系)に2010年4月に入学。

しかし、応募の段階で、2011年中退と記載があり電話で確認してみると、家庭の事情で3月に中退するため春から仕事を探しているとのこと。 

到着した履歴書や志望動機書を見させてもらうと、相当無理なレベル。
そもそも、右も左も判らない状況で就職活動をしている感じを書類から感じたのです。

一応、社内決まった形で書類選考をかけてみたが、当然、NG判断。

通常なら、電話で書類選考不通過の旨をお伝えするところですが、このまま継続しても苦労を重ねるだけなのが眼に見えてしまい、お節介ゴコロと、一抹の「もしかしたら」という期待で、面接という形で会うことに。

そんな経緯で面接。

一旦、通常の型通りに面接をスタートしてみるも、やはり残念ながら話にならない。
しどろもどろという表現が一番適切な状態。

聞くと、初めての採用面接とのこと。

中退の理由を聞いてみると、ご両親が離婚をされ、母親と生活をしていたが、その母親が最近リストラにより仕事を失ってしまい、弟妹がいることもあり、家計に学費負担を掛けられないという想いから大学を辞めることを決めたという。

その事に対し、母親はどう言っているのか?と訪ねてみると、「お金のことは気にせず大学は卒業しろ」と言ってくれているらしい。

それでも、大学を辞める決意をしたのは何故か?と聞くと、「これまで親孝行をしてこなかったから」と、なんとも言えない回答が帰ってくる。

「それは、多分、親孝行にならないよ」と思うまでにとどめ、もう少し話を聞いてみても、あまりに無知なまま、安易に「辞める」→「働く」と決めていた。

さらにA君自身、大学は出来ることなら卒業したいと思っているとのことなので、モードを切り替えて、改めて今後どうすべきか相談会にした。


A君は、正確な家庭の経済事情、いくら稼ぐことが出来れば家庭を支えることが出来るのか?ということも判らない状況。

学費の負担を掛けたくないという主旨ならば、奨学金制度、学費減免の制度、家庭の経済事情急変による救済制度を使えるはず。聞く限りの環境ならば、ほぼ間違いなく各種制度は使えるはず。

そもそも、A君は、そうした制度があることを知らなかった。
さらに、大学を休学すればほとんど学費が掛からないという事実を知らなかった。
A君は中退しなければならない事情を大学相談していなかった。


聞く限りの状況下において選択肢は中退だけではないのは明らか。
「A君、もう一度ちゃんと考え直したほうが良いよ」という状況。


仮に、本当に中退してしまい正社員の道を探したところで、
大学中退、職歴なし無職の19歳を正社員として雇い入れるほど世の中に余裕はない。

もし、
可及的速やかに家庭を経済的に支えたいなら、ガテン系でガッツり稼ぐ方法もあるはず。下手に正社員になったところで、学生をしながらMAXアルバイトをするのと手取りは変わらない、むしろ少ない場合もあるわけで。

と、まぁ、上記のような余計なお節介をしてしまったのですが、A君は、「もう一度、考えなおしてみる」と言ってお礼を言われ面接そのものは終わったわけです。


自分がしたことが正しかったかは判らないけれど、A君と面接を終えて思ったのは、

母親はどういう助言をしているのか?


ということ。

この春大学を卒業する学生ですら未だ就職先が決まっていないご時世に、A君が正社員として就職できると思っているのだろうか?

そして、

A君の周囲に、A君の相談にのり、適切なアドバイスをしてくれる友人や目上の人は居なかったのか?

ということ。

もし、自分の友人として現状のA君がいたならば、全力で止めます。

今回は少し極端な事例なのかもしれないけれど、似たようなレベルで応募してくる方が少なくないことに危機感と不安を覚える今日この頃です。


「大学中退」をキーワードにAmazonさんを検索してみたら、最初に出てきた本はこれ。

大学には入ったけれど―大学中退をめぐる親子の壮絶バトル大学には入ったけれど―大学中退をめぐる親子の壮絶バトル
著者:吉本 康永
三五館(2003-05)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

ちょっと気になる。
スポンサードリンク