※極力ネタバレ的内容は書きませんが、今回はちょっと内容が分かってしまうかもしれません。ご留意ください。
何度も胸糞悪くなって観るの途中で止めてしまおうかと思いながら結局最後まで観てしまう、観させられてしまうという結果となりました。
感動するとか、スッキリすることはありません。引きこもりの主人公が周囲の助けにより最後ほんの僅かな1歩を歩み出すという帰着なのですが、終始鬱展開です。
なお、NHKとはどこかの国の公共放送ではなく「日本ひきこもり協会(Nihon Hikikomori Kyoukai)」の略称です。
大学中退し一人暮らしで引きこもっている主人公の佐藤くん、完全に精神疾患を患っています。幻覚幻聴が出てますし、妄想癖も酷いですし、完全に対人恐怖症です。早々に心療内科に行って欲しいレベルです。
そんな佐藤くんにヒロインの岬ちゃん、偶然隣に越してきた高校の後輩山崎君の3人が中心に、引きこもりから脱却を目指していく物語です。自殺オフ、マルチ商法、ネトゲ廃人、クリエイター願望ネタなどてんこ盛り。
本作品、アニメゆえデフォルメはされているでしょうが、原作者本人が引きこもり経験ありで実体験をベースに書かれているらしいです。そういう理由から引きこもりのリアルが相当に表現されていてが現役引きこもりの人には「まさに自分のこと」と感じられる部分も多く観るに耐えられないのではないかと。でも我慢して最後まで観て色々と考えさせられるべきでしょうね。
引きこもりではない「普通の人」が観ると、おそらく多くの人は主人公の引きこもりの佐藤くんのダメ人間ぶりに胸糞が悪くなり観るに耐えられなくなります。おそらく胸糞悪く感じるのは、どんな人でもダメ人間となりうる因子を内包しているからだと思います。なので我慢して最後まで観て自分の中にあるダメ人間因子に向き合いましょう。
と、作品の感想的なことは以上で、NHKにようこそを見ていて「引きこもり」という事についてちょいと調べ考えたので徒然書き残しておきたいと思います。
■「引きこもり」は現代日本社会の必然?
そもそも引きこもりってどのような状況の人で日本にどれくらいいるんでしょうか?気になって調べてみましたところ、内閣府の「平成22年版子ども・若者白書」に定義や実態など情報がそろっていました。
平成22年版子ども・若者白書
第1部 子ども・若者の現状 第2章 子ども・若者の社会生活 第4節 いわゆるニート,ひきこもり,フリーター等の状況
http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h22honpenhtml/html/honpen/b1_sho2_4.html
上記資料の中から、「ひきこもり」の人口に関する記述を抜粋してみます。
それにしても何故働きもせず生きていけるのですかね?それは「NHKにようこそ」の中でも主人公の佐藤くんが気づいてしまうのですが、
「生きていく最低限の保証があるから引きこもってられる」
ことに尽きるのでしょう。多くの場合は家族が結局面倒をみてくれているから生きていける。そう、それだけの経済力がひきこもりの親にはあるということであり、これは経済的に豊かな日本ゆえなのでしょうね。
となると、要は極限まで追い込まれれば、自らの生存本能に従い働き出すとも言えそうですが、一旦ひきこもりになってしまうと、精神的な病気となっていることも多いわけで、そうすると最悪の選択をしてしまう可能性があるので安易にそういう状況に追い込むわけにはいきません。
■どうすれば「ひきこもり」を社会復帰させられるか?無くせるか?
「ひきこもり」になる原因についても白書の調査結果がありますが、原因はさておき引きこもりとなっている人に対し、根性論精神論をぶつけても解決はしないことを理解しなくてはいけないと思います。
人間誰も弱い心を持っています。多くの人は様々な経験を積みながら、弱い心のコントロール方法を身につけ社会生活を過ごしていくのでしょうが、「ひきこもり」になってしまう人はそのコントロール手法を身につけられなかった、もしくは何かのきっかけで崩壊してしまった人と言えそうです。
自分も仕事が極限までうまくいっていないとき現実逃避してビジネスタイムは何とか耐えながら、部分的に「ひきこもり」のような精神状態になった経験があります。
「ひきこもり」の解決には、誰もが「ひきこもり」になってしまう可能性があり、「ひきこもり」を「病気」と認め「適切な処置」で直るということを社会全体で認めてあげる必要があるかなと。
そして解決にはカウンセラーによる長期的で辛抱強い支援が不可欠なのでしょう。「NHKにようこそ」における岬ちゃんや山崎君はまさに「ひきこもり」の佐藤くんのカウンセラー的役割でした。
多くのリアル「ひきこもり」の人に岬ちゃんや山崎君は表れるわけがないので、社会で支援体制を構築が求められるのでしょう。でも、本来的には家族が助けてもらいたいとこなんでしょうけどね。
■経済がガンガン成長している時期ならいいけれど
経済が成長している過程であれば、人が人並みに頑張れば自身の将来を描きやすかったのでしょうが、この20年以上も経済が停滞している日本では、何をどう頑張れば解らなくなっている人が大量発生してています。
これが「ひきこもり」を発生させる遠因であることは間違いないところで、経済成長の足を引っ張っていると思えます。
個人的には過度に弱者に軸足をおかず、一定数の弱者が発生してもソレを賄えるくらい強者を徹底的に支援するというのもありだと思いますが、民主主義においては、それもナカナカ難しいところ。
ちなみに自分は、「ひきこもり」の支援の含め、生活保護や児童手当など様々な支援を一旦リセットして、弱者保護の視点ではなくベーシックインカムを導入すればよいという考えを持っています。
まぁ突き詰めると、これは結局日本を今後どのような国にしたいかという問題になり、社会問題に対する基軸となる価値観に国民のコンセンサスが不可欠であり、これはまさに政治ということになるのでしょう。
長くなったので戯言はこの辺でおしまい。
最後に、NHKにようこそで心に残った主人公の佐藤くんのセリフを。
「ダメな奴ほど一発逆転を考える」
はい、心の何処かにいつも「一発逆転」を考えているのは自分です。ダメな奴ですみません。
日本ひきこもり協会、日本悲観協会、日本卑屈協会、万歳!
NHKにようこそ! (角川文庫) [文庫]
著者:滝本 竜彦
出版:角川書店
(2005-06-25)
N・H・Kにようこそ! ネガティブパック<オリジナル無修正版> 第1巻 [DVD] [DVD]
出演:小泉豊
出版:角川書店
(2006-10-27)
ひきこもりはなぜ「治る」のか?: 精神分析的アプローチ (ちくま文庫) [文庫]
著者:斎藤 環
出版:筑摩書房
(2012-10-10)
何度も胸糞悪くなって観るの途中で止めてしまおうかと思いながら結局最後まで観てしまう、観させられてしまうという結果となりました。
感動するとか、スッキリすることはありません。引きこもりの主人公が周囲の助けにより最後ほんの僅かな1歩を歩み出すという帰着なのですが、終始鬱展開です。
なお、NHKとはどこかの国の公共放送ではなく「日本ひきこもり協会(Nihon Hikikomori Kyoukai)」の略称です。
大学中退し一人暮らしで引きこもっている主人公の佐藤くん、完全に精神疾患を患っています。幻覚幻聴が出てますし、妄想癖も酷いですし、完全に対人恐怖症です。早々に心療内科に行って欲しいレベルです。
そんな佐藤くんにヒロインの岬ちゃん、偶然隣に越してきた高校の後輩山崎君の3人が中心に、引きこもりから脱却を目指していく物語です。自殺オフ、マルチ商法、ネトゲ廃人、クリエイター願望ネタなどてんこ盛り。
本作品、アニメゆえデフォルメはされているでしょうが、原作者本人が引きこもり経験ありで実体験をベースに書かれているらしいです。そういう理由から引きこもりのリアルが相当に表現されていてが現役引きこもりの人には「まさに自分のこと」と感じられる部分も多く観るに耐えられないのではないかと。でも我慢して最後まで観て色々と考えさせられるべきでしょうね。
引きこもりではない「普通の人」が観ると、おそらく多くの人は主人公の引きこもりの佐藤くんのダメ人間ぶりに胸糞が悪くなり観るに耐えられなくなります。おそらく胸糞悪く感じるのは、どんな人でもダメ人間となりうる因子を内包しているからだと思います。なので我慢して最後まで観て自分の中にあるダメ人間因子に向き合いましょう。
と、作品の感想的なことは以上で、NHKにようこそを見ていて「引きこもり」という事についてちょいと調べ考えたので徒然書き残しておきたいと思います。
■「引きこもり」は現代日本社会の必然?
そもそも引きこもりってどのような状況の人で日本にどれくらいいるんでしょうか?気になって調べてみましたところ、内閣府の「平成22年版子ども・若者白書」に定義や実態など情報がそろっていました。
平成22年版子ども・若者白書
第1部 子ども・若者の現状 第2章 子ども・若者の社会生活 第4節 いわゆるニート,ひきこもり,フリーター等の状況
http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h22honpenhtml/html/honpen/b1_sho2_4.html
上記資料の中から、「ひきこもり」の人口に関する記述を抜粋してみます。
「ふだんは家にいるが,近所のコンビニなどには出かける」「自室からは出るが,家からは出ない」「自室からほとんど出ない」に該当した者を「狭義のひきこもり」と定義し,「ふだんは家にいるが,自分の趣味に関する用事の時だけ外出する」に該当した者を「準ひきこもり」と定義したところ,推計数はそれぞれ23.6万人,46.0万人となった。さらに,「狭義のひきこもり」と「準ひきこもり」を合わせた広義のひきこもり(以下,「ひきこもり群」という。)としたところ,69.6万人となったということで、約70万人もいるんですね…
それにしても何故働きもせず生きていけるのですかね?それは「NHKにようこそ」の中でも主人公の佐藤くんが気づいてしまうのですが、
「生きていく最低限の保証があるから引きこもってられる」
ことに尽きるのでしょう。多くの場合は家族が結局面倒をみてくれているから生きていける。そう、それだけの経済力がひきこもりの親にはあるということであり、これは経済的に豊かな日本ゆえなのでしょうね。
となると、要は極限まで追い込まれれば、自らの生存本能に従い働き出すとも言えそうですが、一旦ひきこもりになってしまうと、精神的な病気となっていることも多いわけで、そうすると最悪の選択をしてしまう可能性があるので安易にそういう状況に追い込むわけにはいきません。
■どうすれば「ひきこもり」を社会復帰させられるか?無くせるか?
「ひきこもり」になる原因についても白書の調査結果がありますが、原因はさておき引きこもりとなっている人に対し、根性論精神論をぶつけても解決はしないことを理解しなくてはいけないと思います。
人間誰も弱い心を持っています。多くの人は様々な経験を積みながら、弱い心のコントロール方法を身につけ社会生活を過ごしていくのでしょうが、「ひきこもり」になってしまう人はそのコントロール手法を身につけられなかった、もしくは何かのきっかけで崩壊してしまった人と言えそうです。
自分も仕事が極限までうまくいっていないとき現実逃避してビジネスタイムは何とか耐えながら、部分的に「ひきこもり」のような精神状態になった経験があります。
「ひきこもり」の解決には、誰もが「ひきこもり」になってしまう可能性があり、「ひきこもり」を「病気」と認め「適切な処置」で直るということを社会全体で認めてあげる必要があるかなと。
そして解決にはカウンセラーによる長期的で辛抱強い支援が不可欠なのでしょう。「NHKにようこそ」における岬ちゃんや山崎君はまさに「ひきこもり」の佐藤くんのカウンセラー的役割でした。
多くのリアル「ひきこもり」の人に岬ちゃんや山崎君は表れるわけがないので、社会で支援体制を構築が求められるのでしょう。でも、本来的には家族が助けてもらいたいとこなんでしょうけどね。
■経済がガンガン成長している時期ならいいけれど
経済が成長している過程であれば、人が人並みに頑張れば自身の将来を描きやすかったのでしょうが、この20年以上も経済が停滞している日本では、何をどう頑張れば解らなくなっている人が大量発生してています。
これが「ひきこもり」を発生させる遠因であることは間違いないところで、経済成長の足を引っ張っていると思えます。
個人的には過度に弱者に軸足をおかず、一定数の弱者が発生してもソレを賄えるくらい強者を徹底的に支援するというのもありだと思いますが、民主主義においては、それもナカナカ難しいところ。
ちなみに自分は、「ひきこもり」の支援の含め、生活保護や児童手当など様々な支援を一旦リセットして、弱者保護の視点ではなくベーシックインカムを導入すればよいという考えを持っています。
まぁ突き詰めると、これは結局日本を今後どのような国にしたいかという問題になり、社会問題に対する基軸となる価値観に国民のコンセンサスが不可欠であり、これはまさに政治ということになるのでしょう。
長くなったので戯言はこの辺でおしまい。
最後に、NHKにようこそで心に残った主人公の佐藤くんのセリフを。
「ダメな奴ほど一発逆転を考える」
はい、心の何処かにいつも「一発逆転」を考えているのは自分です。ダメな奴ですみません。
日本ひきこもり協会、日本悲観協会、日本卑屈協会、万歳!

著者:滝本 竜彦
出版:角川書店
(2005-06-25)
![N・H・Kにようこそ! ネガティブパック<オリジナル無修正版> 第1巻 [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/516B6DN52PL._SL160_.jpg)
出演:小泉豊
出版:角川書店
(2006-10-27)

著者:斎藤 環
出版:筑摩書房
(2012-10-10)
スポンサードリンク
コメント