気になってしまいまして大学図書館で借りてきちゃいました。アニメビジネスに関するこの2冊。

アニメビジネスがわかるアニメビジネスがわかる [単行本]
著者:増田 弘道
出版:NTT出版
(2007-07)

 
もっとわかるアニメビジネスもっとわかるアニメビジネス [単行本]
著者:増田 弘道
出版:エヌティティ出版
(2011-08-31)
 
アニメビジネスの概観を知っておきたかったので、この2冊から自分の確認しておきたかった数字などを脈絡なくメモしておきます。以下すべての内容は上記2冊のどちらかを参照したものです。

世界的にはアニメは子どもの見るものとされているが、日本は必ずしもそうはなっていない。1980年代から一挙に広がったアニメの視聴者層は、現在では40代後半までおよんでいる。

「キッズ・ファミリータイプアニメ(KF作品)」と「青年層タイプアニメ(A作品)」では視聴者層の違いだけではなく、制作費や放映枠などビジネス面においても大きな違いがある。

「制作」:作品をつくること=Create、「製作」:作品をつくらせること=Produce

アメリカを中心にアニメ=3Dアニメとなっているが、日本は2Dが主流。日本にはアニメの原作となる漫画文化が定着していてる。漫画は2Dアニメが適していることと、2000年初頭ファイナルファンタジーで大やけどをしてその後、3Dアニメ製作の機運が一気にしぼみ、市場が拡大しなかったとも言われているらしい。

2005年のテレビアニメ制作は、180タイトル3823話。うち95%が1話30分。
1話あたりの製作費は平均1,100万円。キャラクターグッズ販売を中心に据えるKF作品よりA作品の方がコストが嵩む。A作品は1400万円程度という推計もあり。萌系アニメはA作品でも凝った作りにならない傾向となり制作費は抑えられている。
理由1)A作品はアニメファンの期待クオリティに耐えうる作品を作らなければならない
理由2)KF作品に対してA作品は総じて話数が少ない。(製作にかかる初期プロセスは同一でコストが変わらない)

2005年におけるテレビアニメ製作市場の推計規模は約430億円。同様に劇場版アニメの市場規模推計は約64億円(年平均30〜40本。分あたり300万円を基準に算出。)、OVA市場は約34億円。劇場アニメ制作分単価はテレビアニメ制作単価の5〜6倍。OVAの制作分単価は約100万円。

テレビアニメ放映市場の推計値は約365億円。(二次放映市場含まず)全国放送(深夜枠以外)、月額8500万円。テレ東系列全国放送(深夜枠以外)、月額3250万円。テレ東系全国放送(深夜枠)、月額2150万円。関東キー局(深夜枠)、月額1350万円。準キー局(深夜枠)、月額200万円。関東U局(深夜枠)、月額150万円。

日本のアニメが世界中でブレイクするきっかけを作ったのは「ポケモン」 1999年公開「Pokemon:The First Movie (ポケモン/ミューツーの逆襲)」はハリウッド対策並みの全米3043館で公開。初週興業成績で全米1位獲得、最終的な興行成績77億円に至った。

ポケモン以降、日本でヒットしたアニメが次々アメリカで放映されるようになった。

アニメ制作は2000年以降2006年まで右肩上がり。その後減少傾向。2006年のピークは年間のアニメ制作分数は、136,027分。2010年は89,590分(2006年比83%)。2010年の市場規模は2002年のそれと同じレベル。

新作タイトル数も、2006年の年間276本がピーク。2010年で194本。2000年代に限っての新作増減の要因は、アニメファン向けの作品、つまり深夜アニメにあった。

元来アニメは全日帯もしくは土日午前のキッズ・ファミリー向けアニメ(KF作品)だったが、1980年以降はアニメファン向け(A作品)の需要が高まった。しかし、視聴者が限られるA作品はスポンサーがつきにくく、かつ放送コード的に厳しいという理由から劇場版、OVAが多かった。1997年から表現規制の緩い深夜アニメ枠が開放され新作タイトルの急増につながった。

劇場版アニメ作品は、ジブリとテレビアニメ劇場版が支えている状態。歴代劇場アニメ興行収入ランキングをみると、1位「千と千尋の神隠し」の304億円を筆頭に6位までがジブリ作品。上位51作品をみると、ジブリ作品以外は全てテレビアニメの劇場版。特に、ドラえもん(17作品)、ポケモン(12作品)、コナン(5作品)の3作品のみで全体の3分の2強(66%)、興行収入の46.7%

アニメパッケージソフト(ビデオ・DVD・Blu-ray)の統計が登場したのは1983年。1983年の市場規模は272億円。2010年は759億円。ピークは2005年の971億円。その後、減少傾向に陥るが2010年に回復。この理由は、Blu-ray売上増の影響。全パッケージに占めるBlu-rayの比率は17.7%、うち54%がアニメ作品。

アニメファン層は教典(パッケージ)を最先端のクオリティで観たいというニーズが強く、最新ハードを購入しソフトを楽しむ傾向がある。一説には約20万人の需要(パッケージ購入人口)に支えられている言われている。

Blu-rayに相応しいクオリティ作品を制作することは大きな負荷がかかるがテレビ放映レベルではパッケージが売れない。パッケージ中心のアニメビジネスモデルの転換点にある。 

大変興味を持っている「日本のアニメ産業の発展要因と課題」「アニメと音楽との関係」「アニメと配信ビジネス」についても著書内に記述がありましたが、これは別エントリーでまとめるとして、一旦こんなところで。
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