アニメに関するお勉強メモ。以前よりアニメ市場が拡大し続けてきた理由や日本のアニメの特徴を整理したいと思っていたら、以下の2冊に要因が列挙されていたのでメモっておきます。

アニメビジネスがわかるアニメビジネスがわかる [単行本]
著者:増田 弘道
出版:NTT出版
(2007-07)





もっとわかるアニメビジネスもっとわかるアニメビジネス [単行本]
著者:増田 弘道
出版:エヌティティ出版
(2011-08-31)
  
・アニメ市場は一度も不況を経験したことのない右肩上がりの産業 (「アニメビジネスがわかる」は2005年の統計情報を元にして、2006年をピークに製作本数等は減少に転じています。)
・アニメ市場に関する統計情報は、「情報メディア白書」(電通総研)と「デジタルコンテンツ白書」(財団法人デジタルコンテンツ協会)を参照する。

■3回の高度成長期(アニメブーム)を経て発展したアニメ産業
第一次成長期(1963年〜1960年)
→ 鉄腕アトムの放映開始からアニメ定着まで。子供にアニメが定着した。
第二次成長期(1977年〜1991年)
→ 「さらば宇宙戦艦ヤマト」公開からOVA発売タイトルピークまで。アニメ視聴層が子供から青年層にまで広がった。
第三次成長期(1995年〜現在)
→ エヴァンゲリオン放映からテレビアニメ製作数更新中の現在まで。ポケモン、もののけ姫、千と千尋の神隠しなどのメガヒットで広範なアニメブームが起こり一般層、女性層、海外にまで視聴層が広がった。
※書籍出版当時は「現在」としていますが、製作本数が2006年をピークに減少に転じたので、第三次は2006年までですね。

■高度成長期(アニメブーム)を支えた要因


1) メガヒット作品の牽引効果
2) アニメ視聴層の拡大
3) ビデオの登場
もともとアニメビジネスは、ディズニーが確立したキャラクタービジネスメインの収益構造を基本としている。アニメビジネスに参入するには多額な資金が必要。
→ 子ども向けキャラクター商品は単価が低く採算をとるには多くの購買者が必要。
→ ゴールデンタイム枠&長期間の放映が不可欠。
→ 多額な製作費が必要。
→ でありながら、ヒットの保証なし。ハイリスク・ハイリターン。新規参入が難しい。
 ビデオの登場により、パッケージソフト販売が可能になる。子ども向けキャラクター商品=低単価=ビジネス成立には数百万人必要。パッケージソフト=高価=数万人単位でビジネス成立。

 商品化権メインのアニメビジネスはアニメ製作以外にも多数のプレーヤーが関与する。パッケージソフト中心であると、極論、アニメ制作会社とパッケージメーカーのみで成立。 
4) メディアの増加

→ 深夜枠の開放(テレビ東京が先駆け)、BS、CS、アニメ専門チャンネル等チャネル増加。
5) ファイナンスシステムの多様化
→ 製作委員会方式:資金面、プロモーション面で相乗効果がある。
→ SPC、コンテンツファンドなど。
6) 収益構造の多様化
→ ネット課金、海外販売など。
7) デジタル技術による生産性の向上
→ デジタル化により制作スピードが大幅に向上した一方で、高価な機材を必要としなくなりコストも抑えられるようになった。
 
■日本アニメが成長した理由
日本のアニメは「気づいたら売れていた」状態。国策でもなく、アニメ産業界が周到な戦略があったわけでもない。
※最近、国がアニメビジネスを後押ししようとしているのは心配ですね。アニメは文化的側面が強く、それに国が積極関与した途端にツマラナイものしか作れなくなりそう。
 
日本のアニメの持つ3つの優位性

 
1) エンタテイメント性
 ・マンガ文化がつちかったストーリー性の継承 
   → 日本における漫画市場、激烈な「ストーリー戦争」を勝ち抜きアニメ化。
   → 競争環境から高品質なストーリーのアニメが生まれてくる。
 ・苦悩しながら成長するキャラクター
   → 日本の漫画、アニメは内面の成長を伴う「ビルドウングソロマン」といえる。
   → 海外コミックに登場するキャラは年も取らず精神的進化も遂げない場合が多い。
2) 経済性
 ・基本的にアニメ制作にはお金がかかる。
   → ハリウッドでもアニメ制作は高いという認識で一致している。
   → テレビの登場で、1960年代前後にStudioのアニメ部門が次々閉鎖した歴史あり。
 ・日本のアニメ制作費は「安い」とされている。
   → この水準はアトム制作費を引きずってきた結果。
   → テレビ局が支払う製作費と実際に掛かる製作費というダブルスタンダードが出来上がる。
  手塚治虫が制作方法にイノベーションをおこした結果、低予算で制作が可能となり、日本アニメ発展につながったが、制作現場に低賃金、過重労働をもたらすという弊害も起きた。

 ・海外展開に成功したのは世界に類をみない低予算システム。
   → 意図せざるブロックバスター、ダンピング。
 ・低予算で視聴率を確保できる → 世界中のテレビ局が飛びつき、一度頼りだすと抜け出せなくなる。

3) 生産性
  ・効率的な制作手法
   → フルアニメーション、1秒12〜24コマ。アトムは秒3コマ、30分2000枚以内と決めてつくり、簡単で、枚数のかからない動かし方のパターンができあがった。(現在のテレビアニメは平均3000〜4000枚)
 ・制作会社の相依性。
   → 日常的に相互協力をすることで全体のレベルがあがった。
 
 と、メモはこんなとこで。
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