研究ノート(大学教員の徒然)

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アニメのお勉強1冊目の「その2」です。

アニメーション学入門 (平凡社新書)アニメーション学入門 (平凡社新書) [新書]
著者:津堅 信之
出版:平凡社
(2005-09)

太文字はINDEX、囲み文章は著書からの引用です。それ以外は気になった点の要約 ※は自身の感想、です。

第2章 アニメーションの歴史
E・レイノーが開発したテアトル・オプティ(1892)は、静止画を連続投影することで動画的な映像を得られる装置であったため、アニメーションの直接の起源として扱われるのが一般的である。
「コマ撮りによって動かないおすれば、素材を動いているようにみせる映画」で「コマ単位で管理された映画」がアニメーションであるとすれば、アメリカのJ・S・ブラックストンや、フランスのE・コールが制作した作品が、世界最初期のアニメーションであると言えるだろう。
アニメーションという映画分野を今日のように成長させた立役者は、やはりディズニーであろう
ディズニーの業績
1) アニメーションの作画・演出技術の多くを開発したこと
2) 大スタジオにおける分業システムを確立し、作品の大量生産を可能にしたこと
3) 「子ども向け」「ファンタジー」「自然主義的な作画とデザイン」といったキーワードで作品を制作したこと等の結果、アニメーションにおける商業性を拡大したこと

昭和30年代、日本アニメ界のその後の道筋を決定するスタジオが相次いで設立。
1) 東映動画 (1956年7月) → 長編アニメ第一作「白蛇伝」
2) 虫プロダクション (1962年1月) 
 → 「鉄腕アトム」 毎週1回30分の連続放映アニメ(世界的に例のない方式)
 → アニメーションを制作する期間がわずか1週間(当時の常識を全く無視)
「アトム」制作過程では、短いカットを積み重ねることによるスピーディな画面展開等、さまざまな「見せ方」の工夫が考案された。これらの工夫は、結果的に現在まで継承され、海外で「anime」、すなわち日本animeが特異なものとして捉えられる大きな要因となっている。
虫プロ輩出人材
・富野由悠季
・安彦良和
・出崎統
・りんたろう
東映動画と虫プロダクションの登場によって、日本アニメは、長編アニメとテレビアニメの発達という世界アニメ史の中でも独自の道を歩む方向性が決定づけられるとともに、1970〜80年代以降、日本アニメを代表する作品を手がけた多くの人材を送り出すこととなったのである。
1974年10月から半年間放映されたテレビアニメ「宇宙戦艦ヤマト」は、以後約10年間続く空前のアニメ・ブームの火付け役となった作品である。
・「ヤマト」を熱狂的に支持したのは中高生を含む青年層で、草創期のテレビアニメを見て育った世代をうまく取り込むできた現象
・勧善懲悪型のストーリー構成から脱却が青年層へと観客層が広がる大きな要因
・複雑なストーリー構造が日本アニメ特有で、「anime」が海外で特異なものとして捉えられる要因の1つ。 
・「アニメ」に端を発するアニメ・ブームは、1980年代後半から退潮期に入る。
→ 制作される作品の内容やファンの多様化が進み、少数のマニア向けにさまざまな作品が制作されるという傾向が出てきた。
→ その延長線上に制作された「新世紀エヴァンゲリオン」は、一部のマニア間に生じたムーブメントがいつのまにか極大化し、「エヴァ」があたかも現代日本アニメを代表する作品であるかのような語られ方が支配するようになった。   
「ヤマト」以降のブームは、作品と観客双方の多様化が進み、マニア性の強い作品づくりが支配的になりつつも、日本アニメの表現としての可能性をさらに追究していた時期だったとも言える。
宮崎駿の功績
・日本映画史や大衆文化史における日本アニメの位置づけに大きく影響を与え、子ども向け、マニア向けといった枠組みからアニメを開放する道筋を与えた。
・日本アニメが世界的に評価される文化であることを印象づける決定的な効果を及ぼした。

アニメの歴史を把握するに2章はナカナカ良い内容でありましたよ。
厳選して引用したつもりだけど多くなりすぎたので、今回はこの辺で。
 
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どうせアニメにハマるならアカデミック領域にも踏み込み、あわよくば自身の研究テーマに活かそうと思いまして、まずは関連文献を精読していくことにしました。(いつまで続くかは怪しいですけどね)

ということで、大学図書館でタイトルから興味を引いた本を数冊借りてきたので、読みながらメモを書き残していきます。

1冊目はコレ。

アニメーション学入門 (平凡社新書)アニメーション学入門 (平凡社新書) [新書]
著者:津堅 信之
出版:平凡社
(2005-09)

太文字はINDEX、囲み文章は著書からの引用です。それ以外は気になった点の要約 ※は自身の感想、です。

序章 日本アニメーションの現状と「アニメーション学」
アニメーション専門の学部や学科となると極めて少ない。海外では、アニメーションの専門学部や学科はごく普通にあり、韓国でも漫画・アニメーションを合わせると40以上の学部・学科があるようである。
もともと日本では、アニメ・Productionへの人材を提供する「職人養成機関」としての教育が主流であり、もっぱら専門学校がその役割をになってきた。
四年制大学において、美学や芸術学といった学問領域の1つとしてアニメーションを取り組むという動きは、日本では著しく遅れていた。
アニメーションを学問とするための前提条件
・定義・理論を定める
・歴史を整理する(いつ、どこで、誰がどのような作品を、どのように制作したか)
・分類をする。
以上が整い、個々の作品の歴史的な評価や作家の作風・個性といった一般的になじみのある「研究」「批評」に類する作業が、学術的な意味をもったレベルで可能なってくる。
アニメーション研究における周辺領域
・映画、映像、美術、文学、心理学、漫画
それぞれの領域における概念を整理し「アニメーション表現論」「アニメーション心理学」といった分野が確立され、その上で、アニメーションの「研究法」を救命するという作業が必要になってくると思われる。
現在の日本(2005年当時)、各分野における研究者は多くいるが、研究者の成果を体系付けるという段階にまでは達していない。
1.アニメーションの定義

・説明の難しさは「コマ撮り」「カメラの使用・不使用」の2点による。
・アニメーションが技法なのか表現なのかという問題
→ 定義が現在も専門家の立場や解釈によって見解がわかれている。

本書のアニメーションの定義
「絵、人形等を素材として、その素材を少しずつ動かしながら、映画撮影用カメラ等を使用して、コマ撮りによって素材を撮影して得られた映像を映写することで、動かない素材を動いているように見せる映画」
※なんじゃこりゃ?これを定義としてよいのか?

2.アニメーションの定義の変遷
3.アニメーションの元祖
アニメーションの期限と原理を説明する際、よく引き合いにだされるのが、いわゆる映像玩具である。
映像玩具として最も原始的なものは、パラパラ漫画である。
4.アニメーションの媒体
日本では、メディアの特製を活かしたさまざまなアニメーションが制作され、かつ情報伝達の手段としても広くアニメーションを活用していると言えるのである。
5.アニメーション表現の特製
アニメーションに使用される素材の多様さは、他の芸術表現と比較しても突出していると言えるだろう。
どんなに精緻に作られても、アニメーションはしょせん「作り物」であって、映像の情報量は、実写にはかなわない。抽象化された世界なのである。にもかかわらず、ストーリーに惹き込まれ、キャラクターに感情移入し、書かれた自然現象を美しいと感じることができるのは、抽象化された映像や世界に、観客が何らかのイマジネーションを付加し、観客自ら作品を完成させるとでも言えるような側面があるのかもしれない。
「個性が際立つ」という点が、アニメーション表現の最も重要な特性といえるのかもしれない。
6.アニメーション制作の基本的な流れ
1)企画
2)脚本
3)キャラクター、美術等の設定作成
4)監督
5)作画(原画、動画、セル彩色等)
6)背景が(美術)の作成
7)撮影
8)音響制作(音楽、効果音、録音)
9)編集、プリント
日本では完成された画面を観ながら声優が台本を元に演技し、セリフを録音するという工程が一般的で、これをアフレコと呼ぶ。ちなみに欧米では、先に声優の声を録音し、声優の演技に合わせて作画するという工程が一般的である。
※マジで?そうなの?知らなかった。何の絵もない中で演技する声優って凄いね。 

ということで、今回はこれまで。
第二章以降はまた今度。
※いったいいつまで続けられるのだか・・・。

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4月で博士課程も3年目に突入します。これまでさっぱり研究らしい研究をしていないわけでありますが、流石に今年こそは学会発表デビューしようと考えておりまして、年明けから機能停止しているアカデミック脳のリハビリをこっそり始めております。

ということで、最近の論文に目を通すべく大学の論文データベースで検索していたのでが、ふと魔が差してしまいまして・・・。

「アニメに関する研究論文ってどんなものがあるんだろ?」って気になってしまったのですよ。

仕方ないですよね、気になってしまったのですから。小一時間ほど「アニメ」というキーワードで論文検索をした結果を眺めていたら、何となくアニメに関する学術領域が見えて来ました。

論文の種類を大別すると、アニメ製作技術に関する研究が意外と多く、次に多いのは観光学に関わる分野。観光学はアニメの舞台となった地域へファンが訪れるいわゆる「聖地巡礼」効果をテーマにしたものがほとんどですね。この2大勢力に加え言語学、社会学に関連する研究がいくつか。

個人的には、アニメの分類に関する研究や、マーケティングとアニメに関する研究なんかがあるのではと期待したのですが、学術研究としてはすぐには見当たりませんでした。理由までは現段階ではわかりませんが、多分、研究分野として確立されていないのではないかと予想されます。

いくつかは本文にざっと目を通しましたが、「え?これって学生が書いたレポートじゃないの?」というレベルのとある大学教授が書かれた論文もありました。どれとは申し上げられませんけど。大学のレベルというか、研究論文にもピンキリあるというか、なんか残念な気持ちにもなりました。

折角なので2010年ごろから現在までで「アニメ」で検索した結果から以下、記載しておきます。内容を想像しながらお楽しみください。

※Referenceの記載お作法は無視。英語タイトルもちゃんとある論文もありましたが、省略して日本語タイトルのみで記載します。

「アニメの舞台化が地域に及ぼすプロモーションとしての効果 : P.A.WORKS『花咲くいろは』と湯涌温泉「ぼんぼり祭り」を事例として」 畠山 仁友 広告科学 57, 17-32, 2012-12

「アニメ「氷菓」聖地巡礼による経済波及効果」 十六銀行法人営業部 経済月報 (687), 1-10, 2012-09 

「デジタル技術によるアニメの変革史」 金子 満 電気学会誌 132(7), 433-436, 2012-07-01 

「白川郷へのアニメ聖地巡礼と現地の反応 : 場所イメージおよび観光客をめぐる文化政治」 神田 孝治 和歌山大学観光学部

「観光・地域デザイン2.0と観光情報学 : アニメ聖地巡礼から観光の新たなあり方を考える」 
岡本 健 観光と情報  8(1), 15-26, 2012-05 

「現代のアニメを特徴づける「日常性」と「時代の影響」 : アニメ番組の内容分析研究から」 鶴島 瑞穂 放送研究と調査 62(5), 62-71, 2012-05  NHK放送文化研究所 
 
「地域振興におけるキャラクター運用に関する一考察 : 鳥取県米子市・境港市におけるキャラクターの活用」 池田 拓生 観光科学研究 (5), 127-135, 2012-03-30  
 
「アニメの映像表現における日本と海外の差異 : アニメーション「X-MEN」における日米アニメの表現比較研究」 呉 祖維 野地 朱真 映像情報メディア学会技術報告 36(16), 161-162, 2012-03-09 

「青年層にみる日本漫画・アニメーションの魅力要因に関する研究」 丸山 一彦 和光経済 44(3), 75-98, 2012-03  

「アニメにおける不在性と観客性に関する理論的考察 : クリスチャン・メッツ『映画と精神分析 : 想像的シニフィアン』の「アニメ理論」への翻案」 宮本 裕子 Bandaly (11), 263-285, 2012-03 

「時間を伴った絵画」としてのアニメーション : 庵野秀明総監督『ヱヴァングリヲン新劇場版:破」(2009)にみる作画表現」 松野 敬文 人文論究 61(4), 99-125, 2012-02 
 
「ボクたちはアニメに育てられた」 なかはら かぜ 徳山大学論叢  (73), 187-206, 2012-01 

「社会的事象を分析するための対象の関係性によるアニメーションの分類」 土田 昌司 東京立正短期大学紀要  (40) (-), 74-86, 2012 

「魔法少女まどか☆マギカ'における喪の作業について」 太田 裕一 太田 祐子 静岡大学心理臨床研究 11, 9-15, 2012

「アニメ聖地巡礼の地理学 : 「けいおん!」を事例に」 上田 明日香 コンテンツツーリズム研究会創刊準備号, 38-62, 2011-12-31 

「アニメ《舞台探訪》成立史--いわゆる《聖地巡礼》の起源について」 大石 玄 釧路工業高等専門学校紀要 45, 41-50, 2011-12-16

「各ゼミナール代表作要旨 テレビ番組の変化 : アニメを中心として」 小野 正博 追手門学院大学国際教養学部アジア学会アジア学科年報 (5), 90-92, 2011-12 

「涼宮ハルヒ・聖地巡礼」に関する現状調査報告 原 一樹 大崎 みなみ 永島 愛子 日本観光研究学会全国大会学術論文集 26, 225-228, 2011-12

「アニメに学ぶ悲しみの乗り越え方 : 『ONE PIECE』『鋼の錬金術師』を題材として」 益子 洋人 児童心理 65(17), 1474-1479, 2011-12 

「地域とのつながりを考える住教育の教材検討 : テレビアニメ「ちびまる子ちゃん」を利用して」 乾 康代 茨城大学教育実践研究 (30), 261-275, 2011-11-30 

「アニメ声優における「声」の商品化 : サブカルチャー・マーケティングへの一試論」 畠山 仁友 商品研究  58(1・2), 14-28, 2011-11 

「ふたつの"ハガレン" : アニメ「鋼の錬金術師」にみる物語の相補的構造」 川村 清志 札幌大学総合論叢 32, 131-162, 2011-10 

「共感をきっかけとする文化創造 : アニメオタクの認知を中心に」 牧 和生 青山社会科学紀要 40(1), 109-122, 2011-09

「アニメ・キャラクターによる商店街の活性化の基礎的条件--町おこしの事例紹介を中心に」 川田 健 産業経済研究所紀要 (21), 94-96, 2011-03

「アニメ番組視聴が大学生のジェンダー意識に与える影響」 三宅 正太郎 藤田 文 福山大学人間文化学部紀要 11, 9-22, 2011-03 

「残存する力--アニメ版『狼と香辛料』論」 西田谷 洋 国語国文学報 69, 48-39, 2011-03 

「アニメの潮流」 藤井 健 白鴎大学論集 25(2), 1-13, 2011-03

「サザエさん」と「ちびまる子ちゃん」における会話の比較--ポライトネスを中心に 西畑 絵里加 人間文化 (28), 81-89, 2011 

ゼロ年代「セカイ系」アニメにおける社会領域と公共圏 中垣 恒太郎 五島 一美 田辺 章  大東文化大学紀要, 人文科学 (49), 167-186, 2011 

如何でしたか?色々ありましたが、具体的作品名があがると途端にアカデミックな匂いはしませんね・・・。あ、でも静岡大学の太田先生の「魔法少女まどか☆マギカ'における喪の作業について」は内容がかなり気になるりますね。

自分は、

「エヴァンゲリオン・マーケティング 〜アニメ・キャラクターを使用した商品プロモーションに関する研究」

を執筆してみますか。事例研究レベルになってしまいますが・・・
まぁこれからも息抜き程度に今後も「アニメ×マーケティング」という視点で論文さがしてみようかと思います。ということで、そんなところで。

これは有名ですよね。富山大学の先生でしたっけ。
ドラえもん学 (PHP新書)ドラえもん学 (PHP新書)
著者:横山 泰行
販売元:PHP研究所
(2005-04-16)
販売元:Amazon.co.jp

これは今度大学図書館で借りてこよ。
アニメ学アニメ学
著者:高橋 光輝/津堅 信之
販売元:エヌティティ出版
(2011-04-22)
販売元:Amazon.co.jp

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