先日に続いて塾業界ネタです。小生、数年前から学習塾業界で仕事をしているのですが、これは市場にとても魅力を感じているからで、今回はその理由について書いてみようかと思います。

 理由はいくつかあるのですが、その中でも最大の理由は学習塾市場が「中小零細がひしめく成熟市場」だからです。こういう市場はとても「面白い」と思うのです。もちろん「面白い」というのビジネスで一気に成長する・成長させる機会があるという点で。ということでマクロ視点からになりますが「成熟市場」「中小零細ひしめく市場」の2つの点を、最近作成した資料を使って見て行きたいと思います。

◆学習塾業界は成熟市場

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 学習塾の市場規模の試算はいくつかあるのですが、学習塾白書によると1兆3000億円規模。この市場規模が1990年代中頃から横ばいで推移しているのが現状です。「少子高齢化」といわれている通り、子供の数は減ってきていますが、市場は小中学生の通塾率の上昇により市場規模は維持されています。その市場の中で、上場企業19社(2011年3月時、現在は17社)の売上合計を見てみると上昇傾向にあります。(詳細を見ていくと既存事業は縮小傾向にありながらM&Aで売上を上げている会社がほとんどなのですけどね)

 市場規模は伸びてはいませんが多くの市場が縮小傾向にあるなか、横ばいで推移している市場というのは十分に魅力的ですよね。さらには景気が悪くなっても家庭における教育支出は最後まで削られない傾向にあります。つまり学習塾業界は比較的景気に左右されにくい業界なんですよね。

◆中小零細ひしめく市場

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 個人事業主が6割。従業員規模10名以下が8割。こんな中小零細個人がひしめく業界は他には無いですね。大手が強いようにも見えますが、売上シェアはまだ2割程度。これは学習塾が現状。人が人に教えるというビジネスモデルが主流であり、労働集約型であるため規模の経済が働きにくいというのが理由の1つです。さらに人の力が業績が左右されるので大手でなくとも局地戦で個人で何とかやっていけてしまうのが学習塾なんです。

 この学習塾業界、学習塾を「サービス業」として考えれば打つべき手立ては山ほどあるのですが、全体的に考え方が古い経営者、「教育」を聖域化して経営視点で考えられない経営者が多いのが実態です。要は業界全体として旧態依然としているのです。こういう市場であるからこそ、今後、革新的な技術・サービス、高い経営管理レベルを持って臨めば既存企業を一気に駆逐し市場を奪取できる可能性を秘めていると考えています。そう、一昔前の外食市場のように。

 こういう市場であるため、新規参入してくる企業も多数です。成長の手法の1つは「フランチャイズシステム」であることも事実であり、実際にFC本部の数も年々増えてきています。
(FCってそもそもどうなの?とか現状の学習塾FCがどうなの?というと思うところありますが、そのことはまた別の機会ということで、今回は割愛)
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 ということで、ビジネスを考える上で、新たに創造され成長していく新市場も魅力的ですが、学習塾業界のように成熟していて、大手の寡占化が進んでいない、中小零細企業がひしめく市場で成長分野を見出すのも、それはそれで大変魅力があると考えています。

 教育は国の礎、今後、政治も教育に対して力を更に入れていくことでしょう。IT化の波も遅ればせながらようやく学習塾業界に及んできています。今後、大きな変化を捉えビジネスを広げる機会を捉えていきたいなぁと、そんなことを考えながら学習塾業界に身を置いている次第です。

 もちろん、今回はマクロ視点での考察であり、実際に勝負に出る際には他の要素を細かに観察し検討する必要はありますが、競争相手が資本力で太刀打ちできないような大企業ではなく、中小零細ばかりということであれば可能性は大いにありますよね。この市場の1%を奪取しただけでも130億円、10%で1300億円ですからね。

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