大学院も夏休みとなり、本来ならば修論に時間を割かねばならないわけですが、最近は読もうと思って積んであった本ばかり読んでいる今日この頃です。

そんなことで、ちとブックレビュー的なモノを書いてみようかと。

まずは、ブランド戦略の授業にて慶応大学の高橋先生が紹介してくれた1冊。

「暴走族のエスノグラフィー モードの叛乱と文化の呪縛」佐藤郁哉 著

研究手法の1つとして参考にして欲しいという紹介だったわけですが、素晴らしい1冊でした。

先生方から進められる必読書には総じてハズレが無いのです。

研究にはいくつかの方法論があるわけですが、本書の方法論は「エスノグラフィー」

本書の冒頭にこのような説明が付いています。

「この本の題名にある「エスノグラフィー」という言葉は日本では「民族誌」と訳され、未開民族や特定の地域社会などの文化や社会経済組織をはじめとする生活の諸様式について、フィールド調査を通じて組織的に描き出す方法およびその成果として書かれるモノグラフや報告をさす。
本書は、暴走族という、現代の日本に生息する一部族についてのエスノグラフィーである。」

「暴走族」というと、今は昔という感じもする言葉になっていますが、本書の出版は1984年。

この調査研究が元になりシカゴ大学で博士号を取っているらしいです。

何が凄いって、佐藤氏は、1年にわたって京都の右京連合という暴走族に入り込んでいることなわけです。

単に、外から調べた成果ではなく、自らも暴走族に片足を突っ込んで中からの視点を持って調査分析した成果というモノなのです。 

本書、謝辞の最後に

「未成年者が多いため一人一人名前をあげることはできないが、時にはくどくシツコいものになりがちな著者のインタビューに快く応じ、仲間(ツレ)として扱ってくれた彼らに改めて感謝の言葉を送ります。本当に、ありがとう。」

ってあるんですよ。謝辞の最後に書かれるくらいだから、相当感謝しているのでしょう。 

それゆえか、本書は、 暴走族の実態について事細かに記述され、そうした事象(つまり集団暴走行為)が生じる社会メカニズムについて言及している訳ですが、一貫して暴走族に対して筆者の「愛」が感じられます。 

本書、
暴走族の歴史から、当時の単車の改造例、車の改造例、当て字を使った暴走族のチーム名の分析や、暴走行為の実例、インタビューを通じたリアルな当時の暴走族の言動、写真と読み物としてすこぶる面白いわけですが、

本質な点は、暴走族の研究を通じた「社会における日常性と非日常性」についての考察です。

特に、その暴走族の活動を、 ミハイ・チクセントミハイによるフロー(flow)という概念に基づいて、考察している点が面白い部分でした。 


フロー(flow)とは・・・
「人がある行為に完全に没頭しているときに感ずる包括的感覚を、フロー flow とよぶ」

フロー経験の特質としては以下の6つの要素があるらしいのです。

1) 行為と意識の融合
2) 限定された刺激領域への注意集中
3) 自我の喪失
4) コントロールの感覚
5) 明瞭で明確なフィードバック
6) 自己目的的性格


スポーツやゲームに没頭している瞬間などはまさにフロー状態ということですね。

暴走族の活動には上記6つの要素が存在していることを事象の積み重ねを通じて説明しています。

非日常は、日常の対極にあるのではなく、日常の延長線上に存在するモノという見解をしめしています。

非日常は社会における安全弁的存在。その1つの形が暴走族だったという訳です。

当時は暴走族という形で非日常性を謳歌した若者。

時代変われど、常に非日常性を求める点においては全く変わることが無いことが分かってきます。

例えば、AKB48などアイドルに熱狂する若者、アニメやネットの世界に生きる若者なども、発生のメカニズム、その活動内容をフローの概念で考察すると、暴走族とほぼ同一だと捉えることができる感じです。

と、こんなところにしまして、
自身にとって、研究するっていうのはこういう事かということか!って気付かされた記念の1冊になりました。

暴走族のエスノグラフィー―モードの叛乱と文化の呪縛暴走族のエスノグラフィー―モードの叛乱と文化の呪縛
著者:佐藤 郁哉
新曜社(1984-10-15)
おすすめ度:5.0
販売元:Amazon.co.jp
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フィールドワークの技法―問いを育てる、仮説をきたえるフィールドワークの技法―問いを育てる、仮説をきたえる
著者:佐藤 郁哉
新曜社(2002-02)
おすすめ度:5.0
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 楽しみの社会学楽しみの社会学
著者:M. チクセントミハイ
新思索社(2001-01)
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