水曜日の授業は後半戦に入りました。
経営戦略2ということで、先生も根来先生から相葉先生になりました。

相葉宏二教授 プロフィールはこちら
東大法学部→ハーバードMBA→都銀→BCG→早稲田教授 とピカピカのキャリアの先生です。全日(昼間)MBAの先生らしく夜間の授業は今回が初めてとのこと。

  大学教授っていうのは、本当に人によっていろんな講義スタイル(芸風)があるなぁってシミジミ感じるのです。相葉先生を自分の少ない人生経験からカテゴリすると、キャリアの通り「銀行マン」っていう感じです。非常に真面目な真面目な講義スタイルです。

それはさておき、初回のイントロ、そして2回目とケーステーマは、

Ryanair

アイルランドの格安エアライン「ライアンエア」です。

ライアンエアー - Wikipedia

直ぐには思い出せなかったのですが、ネットで調べていたらスッチーの水着姿のカレンダーを売り出しちゃっているヤンチャな会社でしたね。2010年版も現在絶賛販売中!のようです。



どこかの国の潰れかけているナショナルフラッグも如何ですかね?

と、それはさておき(このフレーズ多いな…)、本題。

現在では格安航空会社と聞いてもそんな驚きも無いわけですが、ライアンエアはヨーロッパでの格安航空会社の先駆者。その後、多くの格安エアラインが出来ましたが、事業を継続出来ているところが少ない中で、ライアンエアはなんとか頑張っている企業の1社です。

日本はナショナルフラッグはもちろんながら、この10年くらいに新規参入した格安航空会社(結果として低価格で売るしかなかったとも言えますが)も順調とは言い難い訳です。

授業で格安航空会社の成功戦略が見えてくればよかったのですが、どうも議論だけして終了という感じで消化不良だったので自分自身でちょっと整理してみたいと思います。

格安エアラインでの成功モデルはなんといってもサウスウエスト。
いつだか仕組み革新でケースにあったからブログに書いた記憶がありますが、昔、自身が講師を務めたセミナーで特命リサーチ200XのVTRを使って、何故にサウスウエストは強いのか?という内容を話したことがあるのですが、流石に動画はネットで見つかりませんでしたが、文章は残っていました。
http://www.ntv.co.jp/FERC/research/19990307/f1376.html

そのセミナーでの結論は、「優れた組織風土、強い現場力」が強さの源泉であるというもので、その組織風土、現場力を支える要素を考察して、その要素を自社でも参考にして、組織風土、現場力を構築しましょうという内容でした。あの頃は付け焼刃だったけど・・・

ということなのですが、本授業は経営戦略であり、組織風土よりな話ではなく、全社戦略がメインテーマなので、そちらよりの視点で、如何にしたら格安エアラインは事業を成立させることが出来るか?を考察してみたいと思います。

まずは、格安エアラインの基本戦略について。
相葉先生の資料によると、ビジネスにおける戦略とは、

「戦い方の構想」

とあります。
(戦略の定義についてもいくつも考え方があるのですが、それについてはまた別途)

とするならば、格安エアラインは名の通り「低価格で優位性を構築して成長する」ということになります。
噛み砕いてみると、「安い価格で顧客に選ばれる航空会社になる」ということですかね。

となると、既存航空会社よりも安価な料金設定にする必要があるのですが、航空業界は典型的な装置産業。飛行機を購入して、ジェット燃料で飛ばす。空港使用料や予約システムなど人件費などの変動費以外にかかる固定的なコストが非常に大きい業界です。

そうした業界は規模の経済効果が出やすい。1台の飛行機を飛ばすよりも10台を飛ばした方が1台あたりのコスト安くなるということです。

となると、新規参入でコストを既存の航空会社よりも抑えることは理論上は難しいと言えます。
がしかし、航空業界は典型的な国策産業。各国が保護して価格をコントロールして成長してきた歴史があり、競争にさらされていませんから、自ずと高コスト体質になっているということで、普通にコスト削減の努力をしさえすればある程度参入の余地があったと言えるわけです。

格安エアラインは初めから多くの路線を持てません。通常1〜3路線で、しかも主要路線で参入します。日本でもそうですよね。

これが事業継続の上で最初の難関です。1〜3路線で格安エアラインが参入してきて、初期は価格優位により顧客獲得ができるかもしれませんが、当然既存エアラインも、その路線で価格を下げて防衛に入ります。格安エアラインと同等の金額に設定されたら、格安エアラインの優位性は皆無になってしまいます。

格安エアラインは、低価格料金にするためにサービスや人件費をぎりぎりまで削っていますが、既存エアラインは、多くの路線を持っているので、極論、格安エアラインつぶしの為にその路線は赤字でも構わない訳です。

サービスはいつもどおりで価格が安い航空会社と、サービスが簡素化されて価格が安い航空会社だったらどちらが選ばれるか?を考えてみれば、結果は自ずと見えてきます。

顧客ターゲットを既存エアラインと同一とすると、新規参入格安エアラインの戦略は直ぐに破綻してしまいます。

破綻を回避するためには、路線と顧客ターゲットを絞る事が必要になります。

路線は、ハブ&スポーク型ではなく、ローカル空港とローカル空港を直接結ぶ路線のみを選ぶ事になります。低コストの為に選ばざるを得ないのです。ローカル空港であれば、混雑することもなく定刻で離発着が出来ます。空港利用料も安いわけです。

顧客は時間とお金への反応度合いが高い層に絞り込みます。ビジネス客などがそれにあたりますね。

サウスウエストはこれにより成功しています。ライアンエアも一時は経営が行き詰まりましたが、サウスウエストの成功要因を踏襲して復活しました。

仕組み的にはサウスウエストとライアンエアは似ていますが、真逆な状態にあるのが、サービスレベル。
かたやサウスウエストは全米で常に顧客満足度トップに君臨しますが、ライアンエアはサービスが悪くて評判になる会社です。故に、今後、ライアンエアが事業継続が安泰かといえばかなり怪しい感じがします。

このあたりの話になると、組織とオペレーションの話になるので今回は割愛。

格安エアラインの成功モデルはサウスウエストモデルで確立されている感があります。仕組みだけ真似しても、それを支えるオペレーションまでは真似出来ないので極めて優位性が高いということなのです。

結局、組織風土と現場力というオチになってしまうのですが、学ぶべきポイントは、新規参入の際に既存大手と同じ範囲で顧客を奪いあってはいけないということであり、同じ土俵で戦っては行けないということ。

ポーター先生的には集中戦略を採るということになります。そう、その一言で説明終了じゃないですか・・・。

すごいな、ポーター先生は。

格安エアラインは国土の広さが違いすぎる日本ではなかなか難しいかもしれませんね。鉄道網も発達してますし。
格安ではなく、スターフライヤーのようにビジネス客向け高付加価値エアラインは良いかもしれません。

今回もダラダラと長い文章になってしまいました・・・。ま、自分自身の思考の整理にはなったから自己満足ということで。

サウスウエストについては下の本が最高の1冊です。どんな業種業界でも参考になります。

社員第一、顧客第二主義―サウスウエスト航空の奇跡社員第一、顧客第二主義―サウスウエスト航空の奇跡
著者:伊集院 憲弘
販売元:毎日新聞社
発売日:1998-11
おすすめ度:3.5
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